インプラントの歴史
世界に数多く残された遺跡のなかから発見された人骨やミイラに、歯の治療痕が残っているものは少なくありません。
例えばインカ帝国の遺跡のミイラからサファイアをはめ込んだ顎骨が見つかったり、エジプト文明には歯の抜けたところへ象牙や宝石を埋める試みがあったりしたそうです。もちろんそれらすべてが実際に使われたものかどうかは分かりません。死後の世界へ向けての儀式のようなものであったかもしれません。そうであったとしても歯に大きな関心が寄せられていたことは間違いありません。
しかし20世紀になって興味深い発見がありました。それは西暦700年代のマヤ族の女性のミイラに、下顎の骨と一体化した貝殻があったという県です。どう考えてもそれは生前に入れられたものでしょう。永久歯が抜け落ちたあとの治療法として、人工歯を入れるという考えが確かにあったということです。新しい治療法として捉えられているインプラントですが、その歴史は意外に古くからスタートしていたのです。
1952年(昭和27年)スウェーデンのブローネマルク教授がウサギで骨髄の血液循環を調べる実験をしていました。その日の実験が終わって、骨に埋め込んだ金属製の生体顕微鏡を外そうとした所、その日に限って骨から外れませんでした。 いつもと違う金属、チタン製の生体顕微鏡を使っていたのです。そして、チタン製の生体顕微鏡と骨が緊密に接していることを見つけたのです。偶然の発見です。
そして、ブローネマルクはチタンと骨が接合しているこ状態を「オッセオインテグレーション」と名づけました。 当時の科学の常識では、金属と骨が結合する事は信じがたい事でした。科学の歴史が動いたのです。
その後、ブローネマルクは信頼できる科学者、技術者と共に13年間に及ぶ基礎研究、動物実験を行いました。 そこで、あらゆるデータを集め、チタンがある条件のもとでは生体において異物とみなされずに オッセオインテグレーションする性質を利用し、人工歯根(インプラント)システムを開発したのです。ブローネマルクインプラントシステムの完成です。